潮の香りとケーブルと 〜島原鉄道見学記〜 2014/11/17
西山梨緒
大三東(おおみさき)駅
長崎県諫早市の諫早駅から島原鉄道に乗り換え、島原半島の沿岸部に沿って南下する。海のすぐそばを走っているので、車窓から有明海の雄大な景色を眺めていると海上を滑っている気分になる。この開放感。これが、観光客をひきつけるこのローカル鉄道の最大の魅力だ。島原鉄道といえば、「まぼろしの邪馬台国」で知られる古代史研究家、故宮崎康平氏が経営に携わっていたことを思い出すせいか、雄大な景色を眺めているだけでロマンが広がってくる。
もちろん山手側には普通に人家が広がっている。島原の人たちにとっては、なにより大切な生活の足であり、生命線なのだ。諫早大水害、雲仙普賢岳噴火などで大損害に遭いながらも、その度に島原の人たちの愛着を支えにして復旧した。ちなみに島原鉄道は、国鉄の特定地方交通線対策の末、全国各地に誕生した3セクではない。行政の支援を受けながらも、誕生以来、ずっと地元の人たちによって守り育てられてきた。
一時間ほどで大三東(おおみさき)駅に到着。駅のすぐ横は海。潮の香りがする。
こんな風に地元に根ざし愛されている鉄道会社に、商品を納入しているのだと考えると、ちょっぴり誇らしい。
電車と気動車は違う!当然使うケーブルも?
電気(モーター)を動力源としているのが電車、エンジン(主としてディーゼルエンジン)を動力源としているのが気動車。長崎市街を周回している路面電車は、上に這わせているOW線:屋外用ビニル絶縁電線が使用されている。(図1参照)
だが島原鉄道の車両は全て軽油が燃料となる気動車となるとのご説明を頂いた。(図2参照)。外部から電力を取り入れる装置である集電装置電気を動力とする、いわゆる電車とは違う。当然、線路の上に這わせる電線は使用されない。
ゴムのケーブルの正体は!?
「ああ、肝心の電線はほとんど要らないのか」と落胆しかけた時、連結部分にあるゴムのケーブルを発見! 電源線としてケーブルが使われているではないか。(≧▽≦)
使用されているケーブルを拝見させて頂くとゴム系キャブタイヤケーブルの中で最もポピュラーな2PNCTだ。
耐候性・耐油性に優れ、屋外での使用にも適しているケーブルだが鉄道車両関係にも使用されているのは新たな発見だった。
このように弊社が取り扱っている2PNCTがあちらこちらで使用されている。(図3参照)
2PNCTに取り付けられているコネクタ(図4参照)が気になりまじまじと見ていると、
車両工場で整備をされる方が製造元を教えてくださった。
その製造元は「ユタカ製作所」。はて、どこか聞き覚えがある会社名だと、頭をフル回転。そう思い出した。弊社に2PNCTをご注文してくださっているお客様ではないか。
ユタカ製作所とは、長年取引させて頂いているが、鉄道車両・製鉄所向けのジャンパ・カプラー・コネクタを製造されているという漠然としたイメージしかお聞きしたことがなく、弊社が納入しているゴム系キャブタイヤケーブル「2PNCT」の御使用状況を御伺いできればと考えていた。
まさか島原鉄道とつながりがあるとは・・・・。今回のラッキーな発見(←単なる勉強不足だけど)。
ユタカ製作所のコネクタと2PNCTをつなげて図3のように実際に使用されている。
ジャッキにも電源ケーブルが
車両を整備する際に、車両を持ち上げる為のジャッキの電源ケーブルは!???
車両工場で整備中の車両を持ち上げるジャッキに注目。(図5の車両間にある灰色の製品がジャッキである)
やはりこちらも電源線として、2PNCTが使用されている。(図6参照)
長年御使用されていらっしゃると御伺いした。
キャブタイヤケーブルには明確な寿命はなく、用途やメーカー、使用状況によって異なるが、われわれ取扱業者としては10年を目安にお取り替えするのがおススメしている。
会社の存在価値 地元に愛されてこそ
今回、島原鉄道へ取材させて頂いて、正直“電車”とは違う軌道車だったので「電線のニーズはあまりなかな」と思っていたが、意外なところで結構ケーブルが使用されていたので、取材をさせて頂いて驚いた。そんな無知な私に車両工場の方々が丁寧に説明してくださり、今後営業の仕事を広げていく上で大きく知見を広げることができたと思う。
島原鉄道の方々に心から感謝したい。ひょっとしたら、ほかにもいろいろな産業で事業のチャンスが眠っているのではないかという思いも強くした。
また、鉄道事業を通して地域住民に親しまれる存在になっている会社の在り方についても随分と勉強になった。地道に誠実な仕事を積み上げていくことが、会社と地域の発展につながる。私たちもお客様の成功をお手伝いすることで地域に貢献している。大いに自信を持って、幅広く電線・ケーブルの活用を紹介していきたい。
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